映画

キック・アス

バットマンやスパイダーマンのようなスーパーヒーローに憧れて、一般人が同じようなことをするとどうなるか。 酷い目に遭います。痛いし、死にそうにもなる。 ただこの映画がそうしたリアルな痛みを伴う世界と手を結んでいる以上、ヒーローものの基盤となっ…

告白

漬け物のCMでの山口美江の「しばづけ食べたい」の台詞が印象的に記憶に残る。「下妻物語」は深田恭子と土屋アンナの快演怪演が鮮烈だった、大好き。「嫌われ松子の一生」では中谷美紀の軽いけど凄みのある佇まいに驚く。「パコと魔法の絵本」は15分で見る…

伊豆の踊子(1954)

1954年に公開された映画でまず思い起こされるのは、本多猪四郎・円谷英二の「ゴジラ」である。日本の着ぐるみ怪獣特撮映画の嚆矢にして金字塔である。他には溝口健二「山椒大夫」「近松物語」、成瀬巳喜男「山の音」「晩菊」、さらに黒澤明「七人の侍」「蜘…

アバター

今さらですよね、ええ、わかってます、しかも3Dじゃないし。さらには日本語吹替版だし。 普通のSFファンタジーとして見た場合、どこに新しさがあるのか。おそらく山のような指摘があるだろうから、いまさらいちいち調べたりはしないけれど、勝手な利益を…

川の底からこんにちは

ぴあのスカラシップに選ばれた監督の作品はお気に入りになるものが多い。第一回の風間志織*1に始まって、その後の園子温、橋口亮輔、矢口史靖、古厩智之、熊切和嘉、川合晃、李相日、荻上直子、内田けんじらの作品には、よく親しんできた。「川の底からこん…

トイレット

「バーバー吉野」「かもめ食堂」でうまくやった荻上直子監督の、その次の「めがね」はとても嫌な感じの映画だった。 「めがね」を見た時の記事 → http://d.hatena.ne.jp/morio0101/20070930 自分の書いたものを今読み返しても、不快で落ち着かない気分がドロ…

洋菓子店コアンドル

毎日でも食べられるというほどの無類のかき氷好きとして知られる蒼井優が、スイーツ本「蒼井洋菓子店?大好きスイーツ・ベスト88?」を出した。作る方ではなく、食べる方で。写真を見ていると、ほんとうに幸せそうな表情でケーキやお菓子を食べている。その顔…

三軒茶屋の映画館

小さな映画館が次々と畳まれる中にあって、三軒茶屋には昔ながらの古い劇場が二つ残っている。一つは三軒茶屋シネマ*1、もうひとつが三軒茶屋中央劇場*2である。両館ともブログはおろかホームページすら持っていない。実際に足を運ぶと、さもありなんという…

カケラ

不機嫌な満島ひかりを堪能できる。ブスーっとしたさえない表情がとてもいい。人を不快な気分にさせないで、逆に感心させるような不機嫌な表情のできる俳優は、そんなにはいない。最初から最後まで満島の表情を眺めているだけで楽しめる。 公式サイト http://…

おとうと

[DVD]" title="おとうと [DVD]" class="asin">映画館ではなく、ディスクでもなく、wowowで。 山田洋次は大の苦手で、よほどのことがない限り、手は出さない。この作品も、贔屓の蒼井優が出演しているのにもかかわらず、映画館には行く気になれず、レンタルに…

映画館には行かない、の?

めっきり映画館に行く機会が少なくなってしまっている。以前は「どっちでもいいか」と思うものまで足を運んでいたのに、今はそうではなくなった。新旧問わず、昨年初めて接したものを数え上げると80本くらいで、よく観ていた時の半分くらいになってしまった…

ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲

ウルトラマン、仮面ライダーで育った世代である。もちろんオリジナルのね。他にもマグマ大使とかミラーマンとかキカイダーとか。要するに着ぐるみヒーローが悪役たちとプロレスごっこをするようなちょっと怪しいものを、日常の中に自然と受け入れ熱狂し始め…

パーマネント野ばら

ああそういうことだったのかと、最後の方でようやく気がついた。気付くのがきっと遅すぎる。実は怖い話だった。 離婚して子連れで出戻ってきた若い女性の生活がコメディタッチで描かれる。男性はほとんど出てこない。女性たちはそれぞれが快活に振る舞っては…

伊豆の踊子(1963)

1963年に公開された吉永小百合の踊子。本作の西河克己監督が1974年に山口百恵で再映画化していることは、あとから知った。山口百恵が演じた映画は公開当時映画館で観た。肌色ボディスーツで温泉シーンが撮影されたことしか覚えていないけど……。お子様にはそ…

なくもんか

中学校バレー部員の映画と一緒に借りてきた。最後に流れる吉岡聖恵の歌声以外に特に感想はない、と書くとあんまりなので、少しだけ。 生き別れた兄弟がそれぞれの生活の糧を得た後に初めて顔を合わせる。人気稼業の弟には「偽りの過去」が捏造されており、実…

おっぱいバレー

さえない弱小バレー部の中学生たちが顧問の先生の胸を見たいがために部活動に励むというお話。男子中学生のエロへの妄想を契機として何かをがんばるという設定は馬鹿らしくて悪くはない。しかし、なにもかもがステレオタイプに押し込められている。開始10分…

縞模様のパジャマの少年

流れゆくエンドロールを呆然と見守る。そして、この映画のタイトルは、向こう側の少年のことを表しながら、一方でこちら側の少年のことを強く示唆するものでもあったのかと思う。 ナチスの高官の息子とユダヤ人捕虜の少年の友情を描く。この設定からして過酷…

トラン・アン・ユンの視点

「ノルウェイの森」のあと、続けて旧作の「青いパパイヤの香り」と「夏至」を見直した。いずれも舞台はベトナムである。 子供の頃にベトナムを離れ、以来フランスで生活をするこの映画監督にとって、生まれ故郷は相対化されきった異世界であろう。フランスに…

ノルウェイの森

よかった。納得した。 原作を早送りした、あるいはチャプターをいくつかすっ飛ばしたような展開なので、原作を知らずにこの映画だけを観ても、わけがわからないかもしれない。安心して終着点まで運んでくれるジェットコースタームービーを好む人たちにはきっ…

どっちが主役だろう

青山ブックセンターで開かれる催事は、この書店が得意とする方面で活躍する人たちがよく登場する。今日は写真家の石内都と映画監督の西川美和の対談があった。二人の作品には以前からよく親しんでいて、ぜひ聴きたいと思い、はりきってでかけてきた。静止画…

ハーブ&ドロシー

現代アートを見る時、たいてい困惑とか気恥ずかしさのようなものを感じている。 ミンナホントウニソレヲヨイトオモッテミテイルノダロウカ それはすなわち自分の美に対する自信のなさから来るものだろう。便器や殴り書きやゴミの山を訳知り顔で唸りながら見…

カールじいさんの空飛ぶ家

劇場に見に行きたい映画はあれこれとあるのに、実際に見たのは録画してあったカールじいさんとはこれいかに……。 突っ込みどころ満載なのはそれとして、ディズニーのアニメ映画でいつもすっきりしないのは、程度に差があれ、主人公がほぼ幸せになって終わるこ…

REDLINE

「命知らずのレーサーたち 武器搭載もOKの、ルール無用のカーレース*1」とくれば、「チキチキマシン猛レース」か「マッハGoGoGo」を思い出しますよね、それは。絵こそシリアスな劇画調になっているけれど、やっていることはこの二つの傑作アニメーションと同…

君に届け

蒼井優、麻生久美子、上野樹里、伊藤歩らを主演とする映画を作ってきた熊澤尚人。羨ましいというか、目の保養をさせてくれてありがとうというか、ずるいぞこらというか、そんなキャスト選びである。そして最新作では多部未華子を真ん中に据えた。これはもう…

天国と地獄

[DVD]" title="天国と地獄 [DVD]" class="asin">黒澤明監督作品。1963年に公開された。身代金目的の未成年誘拐事件を推理サスペンスドラマとして描く。なんとなく安普請な2時間ドラマにでもありそうな設定ではあるが、そこは黒澤、あちこちに仕掛けを作って…

Colorful

ネタバレっぽい話あり。要注意。 金子みすゞ「わたしと小鳥とすずと」や啓蒙歌「世界に一つだけの花」は気持ちが悪い。まさかこのアニメのクライマックスにこれに通じる台詞が飛び出すとは。タイトルの「カラフル」とは要するにそういうことなのね。 原恵一…

借りぐらしのアリエッティ

ジブリが若い監督を起用して新作を発表した。頑迷で説教臭くなってしまった宮崎駿ではないので期待できると思って観た。かつての名作群よりずいぶんこじんまりとした映画*1ではあるものの、近年の「ハウルの動く城」「ゲド戦記」「崖の上のポニョ」などより…

赤い風船・白い馬

1950年代、フランス映画、少年が主人公、30分ほどの小品、そしてカンヌ国際映画祭グランプリ受賞という共通点を持つ。どちらもアルベール・ラモリス監督の手になる。 まず何より「どうやって当時これを撮影したのだろう」という思いにさせられた。「赤い風船…

アップルシード

「攻殻機動隊」で知られる士郎正宗原作の「アップルシード」(2004)とその続編である「エクスマキナ」(2007)を続けて観た。いずれもwowowのジャパン・クールアニメ特集にて。 先日見直した「イノセンス」に比べると、かなりアクション寄りになっている。…

イノセンス

wowowが「ジャパンクールアニメ」と題する特集をしていて、押井守監督の作品をあれこれ放映していた。せっかくなので、細かいところを忘れかけていた「イノセンス」をあらためてゆっくりと見返してみた。 台詞がとても多い。しかも哲学や文学の箴言をやたら…